TS と GNSS は測り方が根本的に違う
まずここを押さえてください。TS は既知点に据え、基準となる方向からの角度と距離を測り、そこから計算で座標を出します(放射法)。見通し(視通)が必要です。
いっぽう GNSS は衛星からの電波でその点自身の三次元座標を直接求めます。角度を測る機能も、基準方向を視準する機能もありません。視通が不要なのが最大の利点です。
TS による距離測定
気象条件の影響
光波の速さは大気の状態で変わるため、気象補正が必要です。向きを取り違えないよう、次の一本の理屈でつなげてください。
補正に使う気温・気圧は、TS を整置した観測点で、距離測定の開始直前または終了直後に測ります。離れた場所の値や時間の空いた値では、実際に光波が通った大気を代表しないため補正になりません。
誤差の分類
距離測定の誤差は、距離に比例するもの(大気の屈折率の影響など)と比例しないもの(反射鏡定数誤差、器械定数誤差、位相差測定誤差、致心誤差など)に分けられます。後者は定誤差とも呼ばれ、短距離ほど相対的な影響が大きくなります。
なお測距儀は経年で器械定数がずれるため、国土地理院に登録された比較基線場で定期的に検定を受けます。
偏心観測
障害物で直接視通できないとき、少しずらした偏心点から観測します。このとき偏心距離には制限があります。
両端に偏心点を設ける相互偏心の計算では、観測値を AB 方向の成分とそれに直交する成分に分解し、最後に S = √(X² + Y²) で合成します。
観測値の点検
水平角は倍角差・観測差、鉛直角は高度定数の較差で点検します。標準偏差ではなく較差で見るのがポイントです。距離測定は 1 視準 2 読定を 1 セットとします。
点検路線の選び方
観測後の閉合計算に使う点検路線には、4 つの条件があります。
- 既知点と既知点を結ぶ 片端が新点では比べる相手がなく、閉合差が出せない。
- すべての既知点がどれかの路線に含まれる 取り残しがあると、その点の観測が未検証のまま残る。
- すべての単位多角形が、いずれかの路線と重複する どの路線も通らない閉ループがあれば、そこは素通しになる。
- できるだけ短く 長いと誤差が累積し、異常の有無を判別しにくくなる。
選択肢を絞るときは、この順に潰していきます。3 つ目のループの取りこぼしで落ちる選択肢が最も多いので、そこを丁寧に見てください。
GNSS の誤差消去の原理
GNSS が高精度を出せる中心的な仕組みが、位相差の階層的な差分です。
- 一重位相差(2 受信機で同一衛星)… 衛星の時計誤差が消える
- 二重位相差(一重位相差どうしの差)… さらに受信機の時計誤差も消える
- 三重位相差(時刻方向の差分)… サイクルスリップの検出に使う
軌道情報は放送暦が標準
基線解析に使う軌道情報は放送暦を標準とします。精度は数 m 程度ですが、相対測位では基線の両端に同じ軌道誤差が共通に効くため、差をとる段階で大部分が相殺されます。精密暦は長基線や特に高い精度が必要な場合の選択肢であって、常に使わなければならないものではありません。
PCV 補正
アンテナの電気的な位相中心は、電波の到来方向によってわずかに移動します(PCV)。この癖は機種ごとに固有なので、同一機種どうしなら相殺されますが、異機種を混ぜると相殺されず、特に高さ方向に系統誤差として残ります。異機種を組み合わせる場合は原則として PCV 補正を行います。
衛星数の基準
| 条件 | 必要な衛星数 |
|---|---|
| スタティック法・基線 10 km 未満 | 4 衛星以上 |
| スタティック法・10 km 以上(GPS・準天頂のみ) | 5 衛星以上 |
| スタティック法・10 km 以上(GLONASS 併用) | 6 衛星以上 |
GLONASS を併用すると要求数が 1 つ増えるのは、系が異なると時系の違いを解く分だけ未知数が増えるためです。「GPS 2 機+準天頂 2 機+GLONASS 1 機=5 機」で 10 km 以上、といった選択肢は基準を満たしません。
アンテナ高
アンテナ高は標識上面からアンテナ底面までを測ります。「位相中心まで」ではありません。