次の 1 ~ 5 の文は,公共測量における GNSS 測量機を用いた基準点測量について述べたもの である。 明らかに間違っているものはどれか。 次の 1 ~ 5 の中から選べ。

GNSS 測量の 誤差消去の原理・軌道情報の使い分け・各観測方法の定義 を横断的に問う正誤判定。選択肢はいずれも作業規程の準則および「GNSS測量による基準点測量作業マニュアル」の基本事項からの出題で、1つずつ根拠を確認していく。
PCV(Phase Center Variation = アンテナ位相特性)とは、GNSS アンテナの「電気的な位相中心」が、電波の到来方向(仰角・方位角)によってわずかに移動する性質のこと。位相中心はアンテナの物理的な中心とは一致せず、そのずれ方はアンテナの機種ごとに固有の癖を持つ。
同一機種どうしを組み合わせた場合、両端のアンテナに同じ癖が現れるため、基線ベクトル(2点の差)を求める段階で誤差の大部分が相殺される。ところが異機種を混在させると癖が食い違うため相殺されず、とくに高さ方向に系統的な誤差として残ってしまう。このため異機種のアンテナを組み合わせる場合は、原則として PCV 補正を行う必要がある。記述のとおりで正しい。
GNSS の相対測位が高精度を実現できる中心的な仕組みが、この位相差の階層的な差分である。
・一重位相差(2 台の受信機で同一衛星を観測した差)… 衛星の時計誤差が消去される
・二重位相差(一重位相差どうしの差=2 受信機 × 2 衛星)… さらに受信機の時計誤差が消去される
つまり衛星・受信機の両方の時計のずれが二重位相差の段階で取り除かれる。記述のとおりで正しい。なお、二重位相差をさらに時刻方向で差分した三重位相差は、サイクルスリップ(位相の不連続)の検出に用いられる。
スタティック法の定義そのままの記述。複数の観測点に GNSS 測量機を同時に整置し、一定時間にわたって同じ衛星群からの信号を受信して、その観測データを基線解析にかけ、観測点間の基線ベクトル(三次元の位置の差)を求める。観測時間を長く確保できるため精度が高く、1〜4 級基準点測量の基本となる観測方法である。
基線解析に用いる衛星の軌道情報は、放送暦(ブロードキャストエフェメリス)を標準とする。放送暦は衛星が航法メッセージとして常時送信している軌道情報で、精度は数 m 程度と決して高くない。しかし相対測位では、基線の両端の受信機に同じ軌道誤差が共通して効くため、差をとる段階でその大部分が相殺される。基線長が短いほどこの相殺は効き、実用上は放送暦で十分な精度が得られる。
一方の精密暦(IGS 等が観測後に提供する数 cm 精度の軌道情報)は、長い基線を扱う場合や、とくに高い精度が求められる場合に用いる選択肢であって、スタティック法なら常に使わなければならない、というものではない。したがって「用いなければならない」と断定するこの記述が誤り。
なお、測量士試験では「必ず」「〜しなければならない」と言い切る選択肢が誤りである頻度が高い。本問はその典型例といえる。
ネットワーク型 RTK 法の定義どおりの記述。電子基準点網の観測データをもとに位置情報サービス事業者が算出した補正データ、または面補正パラメータ(FKP)を、携帯電話などの通信回線を通じて移動局が受信する。移動局側で解析処理を行い、その場で即時に位置を求める。従来の RTK 法と違って自前の固定局を設置する必要がない点が大きな利点である。