次の a〜e の文は,公共測量における GNSS 測量機による水準測量 (以下「GNSS 水準測量」とい う。)について述べたものである。明らかに間違っているものだけの組合せはどれか。次の 1~5 の 中から選べ。

GNSS 水準測量(「GNSS による標高の測量マニュアル」)に関する正誤判定。
前提として押さえておきたいのは、GNSS が直接求めるのは「標高」ではなく「楕円体高」だということ。両者は次の関係で結ばれている。
つまり GNSS 水準測量とは、GNSS で楕円体高を精密に求め、そこから国土地理院のジオイド・モデルによるジオイド高を差し引いて標高を得る測量である。高さ方向の精度がそのまま成果の精度になるため、高さの誤差要因に対して各所で厳しい条件が課されている。この視点で各記述を見ていく。
記述は「標高を定める測量であるため PCV 補正を行わない」とするが、理屈が逆である。PCV(アンテナ位相特性)とは、アンテナの電気的な位相中心が電波の到来方向によってずれる性質のことで、その影響はとりわけ高さ方向に強く現れる。標高を求める測量だからこそ、PCV 補正は省略できない。GNSS 水準測量では原則として PCV 補正を行う。
ジオイド・モデルを併用することで標高が求められる(冒頭の式)ため、GNSS 水準測量によって3 級水準点を設置することが認められている。マニュアルはその適用範囲を既知点からの距離 6 〜 40 kmと定めており、記述はこのとおり。直接水準測量のように路線を実際にたどる必要がないため、山間部や横断が難しい地形で特に効果を発揮する。
使用できる既知点は、一〜二等水準点、電子基準点(標高区分:水準測量による)、1〜2 級水準点に限られる。共通しているのは、いずれも標高が水準測量によって高精度に決められている点だということ。電子基準点がすべて使えるわけではなく「標高区分:水準測量による」ものに限定されるのがポイントで、GNSS によって標高を与えた点を既知点にしてしまうと、その誤差をさらに引き継いでしまうためである。
GNSS 水準測量の観測はスタティック法のみで行う。ネットワーク型 RTK 法は即時に結果が得られる利点がある反面、観測時間が短く、高さ方向に必要な精度を確保できない。長時間の連続観測によって衛星配置の変化を取り込み、対流圏遅延などの誤差を平均化できるスタティック法でなければならない。「ネットワーク型 RTK 法により観測を行う」とする記述は誤り。
GNSS の電波は大気を通過する際に遅れる。とくに対流圏の水蒸気による遅延は変動が大きく、正確なモデル化が難しい。基線の両端で水蒸気の分布が違えば遅延の差が誤差として残り、これも高さ方向に効いてくる。寒冷前線や温暖前線の通過時は水蒸気分布が短時間で大きく変化するため、原則として観測を行わない。記述のとおり。